世界最貧国「トーゴ」でのボランティア。渡辺梨紗さんに聞いた、アフリカへの情熱と想い。

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世界最貧国「トーゴ共和国」で国際開発のボランティアをした渡辺梨紗さん。「小学生の頃からずっと、アフリカの貧しい子どもたちを助けたい気持ちがあります。」彼女のマインドがブレることはありません。

アフリカへの情熱。自分だけの人生でなく、困っている誰かのために働くGIVE精神。いつかアフリカで働きたいと願う、強い意志。彼女の想いを聞けば、きっとあなたも海外ボランティアへの一歩踏み出すことができるでしょう。今日は、梨紗さんのバックグラウンドから将来のビジョンまでお聞きしました。

脳裏から離れない「国境なき医師団の貧困国での活動映像」

ー本日はよろしくお願いします。梨紗さんは、いつ頃から国際協力に興味を持たれたのですか?

小学生です。愛地球博で国境なき医師団が「貧困国で子供たちを助けている映像」を見て、衝撃が走りました。自分と同い年なのにあまりにも細い子。家族がいない子。栄養失調の子。紛争や戦争から逃げて、学校に行けない子。映像の中には、恐ろしい現状がありました。今でも脳裏に焼きついています。あの時流れていた、ミスチルの音楽まで鮮明に覚えています。

漠然と可哀想だな。何か助けてあげたいな。自分の中の当たり前が、世界でこんなにも違うのか。小学生ながらにこう思ったのが、今の自分の「原点」になっています。

ー小学生で「助けてあげたい」と思える梨紗さんは人間のお手本ですね。

当時流行していたプリキュアやセーラームーンなどの「戦隊ヒーロー」に自分を投影していたからだと思います。自分もヒーローになって、困っている人を助けたい。そう思っていました。「国境なき医師団の方々」と「戦隊ヒーロー」が自分のルーツかもしれません。

ー素晴らしいですね。私だったらなかなか自分をヒーローに投影できないです。梨紗さんの中学や高校時代のエピソードも気になります。

中学生の時は、国際開発の勉強を自主的にしていました。社会の教科書の最後のページにある時事問題を読んでましたね。貧困国の子供達の識字率。10代で結婚する女の子の割合。ジェンダー格差。これらをざっくりと勉強した時、小学生の時に抱いた問題をリアルに感じました。貧困国の子供達を助けてあげたいと思いましたね。高校は国際開発を学べる大学を軸に、進路選択をしました。

世界最貧国「トーゴ」でのNGOボランティア

ー大学生では「トーゴ」にボランティアに行かれていましたね。「トーゴ」を選ばれた理由はありますか?

「アフリカ、最貧国、子供、ジェンダー」このキーワードが、ボランティア国を選ぶ上で、外したくない条件でした。万博で見た映像がアフリカだったので、絶対にアフリカに行きたかったです。あとはどうせ行くなら今しか時間がないと思い、最貧国に行きたいと思いました。特に解決したい問題は子供たちの貧困問題やジェンダー格差だったので、全ての条件が揃う「トーゴ」を選びました。

ー世界最貧国でのボランティア。決断まで不安や、緊張はありませんでしたか?

不安はなかったです。ゼミの先生が背中を押してくれました。「やりたいことがトーゴならできるんじゃない?」と言葉をかけてくれて。初めて海外での長期滞在でしたが、ワクワクな気持ちでいっぱいでした。

ーたくましいです。トーゴで行ったNGOボランティアについて教えてください!

平日の8時〜17時までNGO(非政府組織)でボランティア活動を行います。NGOの団体名はヘルサインターナショナルです。

ヘルサインターナショナルは、道端で暮らしている子供たちを「教育・衛生・経済」の3つの面からサポートする団体です。教育では、学校を提供。衛生面では、病院に行けない子供の感染症のチェック。経済面では、子供を養子として受け入れてくれる家庭を探します。ただ子供を上からサポートするのではなくて、多角的に最後まで結びつきができるように促す団体でした。

ー梨紗さんは、「教育・衛生・経済」のどの分野に携われたのですか?

教育です。ストリートチルドレンを呼んで、授業をしてました。コンクリートの壁に、コンクリートの屋根。床は土の掘立小屋の教育施設が3つあります。言葉は悪いですけど、ボロボロの施設で。その施設の周りにいる子供たちに声をかけると、毎日20人ほど集まります。誰が来ても良いのですが、毎日来る子が違って、1回来てもう会わない子もいました。家族はいないし、住む家もないから、みんな生きるためにいろいろなことをしないといけないですね。

子供は、ゴミ山を漁って売れそうなものを町に売りに行っている子。隣の国のガーナから、1週間くらいかけて逃げてきた子。暴力を振るわれて、親戚を当てにしてきた子。生きるか死ぬかの世界で生きている子供がたくさんいました。さまざまなバックグラウンドを持った子供たちを支えるために、ヘルサインターナショナルが存在しています。

学校で水をもらって嬉しそうな子

ー厳しい現実ですね。教育の有り難さを実感します。そこでは何を教えていたのですか?

学校で教えるのは最初は塗り絵や折り紙でした。でもそれだと何も力にならないと思って、自分で授業を考えました。百マス計算を自分で作って計算の仕方を教えたり、お金の数え方や、道路の渡り方をパワーポイントで作って授業しましたね。「生きていく上で必要なことを教えなくては意味がないのでは?」とリーダーに提案したんです。

学校で授業をする様子

ー行動力がすばらしいです。道路の渡り方を知らないと、命を落とす子供もいますね。

そうですね。道路を渡る時に車を待つことを知らないので、クラクションを鳴らされて怒鳴られて、喧嘩になってしまうこともあります。子供は大人に勝てないので、暴力を受ける子もいますね。

あとは、服の着方を知らない子供も多かったです。思春期の男の子なのに、すごい小さい女の子のワンピースを着てパツパツの子を見ました。Tシャツを着ている子は、腕から首が出ていました。服の着方も教えてもらっていないので分からないようです。何が悪いことかわからないので、物を盗む子もいました。

ーとても心が痛みます。実際の貧困国の子供たちの現状は、とても厳しいですね。

でも、この話の登場人物は全員男の子です。女の子は日中、売春をさせられて働いています。女の子は夜になったらやっと、自分の時間を確保できるのです。女の子の売春問題はすごく深刻です。男の子はNGOの団体がサポートしてくれるけど、女の子は誰もサポートしてくれません。だから、私は将来「貧困国の女の子の教育」に携わっていきたいと思っています。

「貧困=かわいそう」ではない!現地で見た子供たち

ー現地で感じたことや、学んだことはありますか?

強く思ったことは2つあります。1つ目は、「貧困=かわいそう」と決めつけるのは、一方的な偏見にすぎないと気づきました。子供たちの目はキラキラしていて、とても幸せそうに見えたからです。子供はいろいろなことを学ぼうと、毎日楽しく生きています。

万博で見た「目が沈んで、怯えるような子供」は1人もいなかったです。「今日絵が書けたよ!」「単語を覚えたよ!」と報告に来てくれて、自分ができたことに対して喜んでいました。この現実があるから、「かわいそう」と決めつけるのは違うと感じましたね。

でも、現実は多くの子供たちの未来を狭めてしまっています。 仕事終わりには、小さい子供たちが、自分たちで作ったおもちゃを売っている姿を見ました。貝殻を拾い集めておもちゃを作り、日本円で10円、20円で販売しています。でも、誰も買ってくれないのです。この子たちは生きていけるのかと胸が痛みました。

相手の感情を決めつけずに、現実と向き合う。貧困国の子供たちのマイナスイメージが払拭されたからこそ、現実と向き合うことの大切さを感じました。

生きるために、自分で海岸で拾った貝殻でグッズを作って見せてくれた時の写真

ー私自身も決めつけてしまう面がありました。ですが梨紗さんの言う通り、プラスの現実もマイナスの現実も、目を逸らさずに向き合うことが大切ですね。もう1つ、現地で感じたことがあるのですか?

はい。2つ目は、「NGOでの根本的な解決は難しいのかもしれない」と感じました。「与えることだけ」になってしまっている気がして。絵を描かせておけば良い。本を読ませておけば良い。与えるだけの活動は、本質的な解決にはなりません。でもこれは、スタッフの皆さんにお金が回っていないので、活動のモチベーションに繋がらないのだと考えていました。だから、自分がビジネスの知識を身につけて、アフリカでお金を回したいと考えています。

将来は絶対に「アフリカでジェンダー開発」今見据える2つのビジョン

ートーゴでのボランティアを踏まえて、現在の梨紗さんについて教えていただきたいです。

現在は某アパレル企業で働いています。アパレル業と国際開発はかけ離れているように見えますが、経営の勉強をするために将来の準備期間として働いています。「ヒト・モノ・カネ」を動かすことを日頃から意識しています。今の経験を、将来アフリカでビジネスをする時に活かしていきたいです。

国際開発との関わりもあります。小中学校で年に一度、難民支援の活動を伝える講演を会社が開いていて。そこで自分のトーゴでの経験を交えながら、お話しさせていただいています。講演を聞いて下さった方々が、少しでもアフリカや貧困国でのボランティアを身近に感じてもらえたら嬉しいです。

ーやはり「アフリカでの国際開発」の軸は変わらず活動されているのですね。本当にかっこいいです。将来のビジョンはありますか?

最終的には、アフリカで仕事がしたいです。この目標を達成するために2つゴールを設定しています。1つ目は、「青年海外協力隊」に入ることです。「青年海外協力隊」では2年という長い期間で、現地の方と一緒になって生活の質をボトムアップできるので、自分のやりたいことが実現できると思っています。やはりそこでも、「アフリカのジェンダー開発」に携わりたいです。

2つ目は、海外の大学院に行きたいと思っています。知識がないところには、何も生まれないと思っているので。海外の大学院にこだわる理由もあります。日本の大学院に比べて、教授の質が高く現地で研究できるチャンスもたくさんあるので海外で学びたいです。フラットな関係で、アフリカについてより深く研究したいですね。

大切なのは「マインド」経験は人生の財産になる!

ーこの記事を読まれている方は「海外ボランティア」に興味を持たれている方も多いです。最後に読者の方々へメッセージをお願いします!

「海外ボランティア」で大切なのは「マインド」です。少しでも気になったら行くべきです。現地で得られる経験は一生の財産になるでしょう。

多くの方は言語を気にされますが、言語は関係ないと思います。私はフランス語が公用語のトーゴに、何もわからない状態で行きました。現地では、Google翻訳を片手に会議に参加したり、コミュニケーションを取っていて。言語はなんとでもなることが分かりました。

ただ、ボランティア先では現地の人と打ち解けられるように、努力することが大切だと思います。押しつけや偏見は持たないで、真っ新な状態でボランティアに取り組みましょう。自分の目で見て問題だと思ったことに、取り組んでいってほしいです。自分自身も、何事も決めつけず、相手と真摯に向き合える人物になりたいと思っています!

ーマインド次第で言語の壁は壊せるということですね。自分の目で問題だと思ったことに取り組む。この言葉も刺さりました。梨紗さんの将来を心から応援しています!本日は貴重なお話を本当にありがとうございました!

ホストファミリーの皆さんと手を繋いで撮られた一枚

編集後記

「アフリカでのジェンダー開発」の軸をぶらすことなく、変化を恐れず、挑戦心を忘れない梨紗さん。自分だけの人生でなく、困っている人のために生きていきたい。人間のお手本のような彼女のマインドは、小学生から変わることはありません。辛く厳しい現実も、彼女が語ることで明るい未来が切り開けるような印象を受けました。

「マインド」を大切に。決めつけず、自分が目で見て感じたことを問題として取り組む。海外ボランティアだけでなく、全ての物事に対して大切であるような気がします。さらに梨紗さんについて知りたいという方は、彼女の「トーゴのボランティア体験記」を読んでみてください。

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