海外経験者と仕事とは何かを考える【インタビューセッション】

ライフスタイル

「仕事」とは皆さんにとってどんなものでしょうか。生きていく上で必要不可欠な仕事ですが、多くの人が自分にとって働く意味や目的を考えたことがないかもしれません。

今回は海外在住を経験した起業家から大学生までお招きして「仕事とは何か」をお聞きしました。日本を出たからこそ見える仕事の価値観に触れると、働く選択肢や可能性が増えるでしょう。

今のキャリアに悩んでいる方。好きなことをして働きたい方。やりたいことが見つからない方はぜひこの記事を読んで、新しい一歩につなげてください!

プロフィール

長江美月(ながえみづき)サンフランシスコ在住。大学院留学で渡米し、異文化コミュニケーション学科終了。卒業後、在学中のインターン先であった留学エージェントに就職し3年間勤務。その後起業し。今年で20年目になる。起業後は、個人、団体向けにカスタムスタイルの短期研修を企画・運営に携わる「好き」を仕事に「楽しみながら」仕事をすることがモットー。

優花(ゆうか) 東京出身。高校入学後、摂食障害で不登校に。陽気で褒め上手で寛容な国民性に惹かれ、19歳で単身渡米。4年後に大学卒業。IT企業で新卒人事、国際交流団体では海外派遣&訪日外国人のコーディネーター。現在は米国組織の日本支社でマーケティングを担当。異文化コミュニケーション、国際交流、通訳、ブランディング、UXデザイン等に興味がある。

八巻美穂(やまきみほ)1998年生まれ、23歳。2021年に南山大学総合政策学部を卒業後、塾講師となるが適応障害になり2ヶ月で退社。現在はフリーライターとして、記事の執筆に携わる。執筆記事は、教育、英語学習、インタビューなど幅広く活動中。

原田 彩季子(はらだ さきこ)1998年生まれ、23歳。2018年に明治大学国際日本学部に入学、現在4年生。ダイバーシティやジェンダーについて学んだことをきっかけに、大学2年次にサンフランシスコでのNPOボランティアに参加。現地での経験を元に食品業界へ興味を持ち、現在勉強中。卒業後は食品系専門商社に就職予定。

海外経験者が語る仕事の価値観

優花さん:皆さんが「どこに所属している」というよりは、皆さんにとって「仕事とはどういうものなのか」聞きたいです。

美月さん:私は、アメリカに今在住していて、留学後に就職し独立して現在に至ります。独立したことと関係しているんですけど「仕事=自分」みたいなところがあって。仕事とプライベートを分ける時間を過ごしてきませんでした。

それくらい仕事が好きで、仕事が自分を表現する場であると思っています。

美月さん:優花さんにとって仕事はどういうものですか?

優花さん:私は大学時代をアメリカで過ごしました。卒業する時にアメリカで就職するか、日本で就職するか考えて、そこが人生のターニングポイントでした。

すごく尊敬できる社会人の方に、就活時代に出会って。その人のいる日本の会社で就職しました。ですが、その人が結婚してアメリカに行ってしまって。一緒に働いたのは3ヶ月という、オチ付きなんですけど。

自分のファーストキャリアに一番影響を与えた人ではあるし、その人には感謝はしています。だけど、仕事や人生は自分の思い通りにいかないのだと思いました。

その人と出会って会社を決めた大きなポイントとなりましたが、それは社会に入ってからは守られるものじゃないことを実感しています。

優花さん:美穂さんにとって仕事はどういうものでしょうか?

美穂:仕事は、自分にしか出せない価値を提供することだと思っています。新卒で入った会社を適応障害になって2ヶ月で辞めた時に、自分の将来についてよく考えたことがきっかけです。

これから再就職するのか。フリーになるのか。それとも、完全に休むのか。会社を辞めたタイミングで、これから進む道を考えました。同時に、自分にアドバイスを与えてくれそうな本も読みました。本を読む中で未来予測ができるようになって、これからの時代は「クリエイティブ」が時代を生き抜く上で必要だと感じました。

自分にできるクリエイティブ。それは「文字」だと思いました。文字を書き続けることで、自分にしか出せないものを生み出して、誰かの背中を押すことができる確信があって。今は、自分にしか出せない価値提供を軸に仕事をしています。

優花さん:文字で伝えることにすごくこだわりを感じます。何か理由はありますか?

美穂:言葉はストレートで、残るのが魅力的です。あとは、読み返した時に違う感情が生まれるので、そこに惹きつけられていますね。

「大学生の目線」から考える仕事で大切にしていきたいこと

美穂:彩季子さんは「大学生の目線」で働くとはどう感じていますか?

彩季子さん:私は仕事を通して「人を大切にしたい」と思っています。この考えに至ったのは、友達が今年の2月に亡くなってしまったのが影響していると思っています。

就活は、食品の会社を選びました。病室で過ごしている友達の姿や、サンフランシスコで老人ホームを訪れた時にお会いした、戦争でアメリカに移住せざるをえなくなった方とのお話しが関係していて。その時に色々な暮らしがあることを感じました。

色々な暮らしがある中でも「食事」は毎日口にするものだし、日常の中で何か楽しいなとか、モチベーションを上げられるような製品に携わりたいと思い、食品を選びましたね。

就活の際には「どうやって仕事を決めるか?」という話を人事の方とよくしていました。そこで「誰に向かってどういうものを提供したいか」を考えると、自分のやりたいことが見えてくるのではないかということをお話しいただいて。その時に「自分が作りたいものの先にある人」のことを考えて仕事をしていきたいと思いました。

人を大切にする結果「人の心を追う仕事」に出会う

美月さん:「誰に向かってどういうもの」を考えるのは大切だね。私も仕事の軸についてよく考えます。

人によって、お金を儲けることが仕事なのか、自分の生きがいのための仕事なのか分かれると思います。仕事はお金を儲けるためと考える人が多いかもしれませんが、仕事に携わっている部分に「好き」が多い方が、頑張れるのではないかと個人的には思っていて。

その中でも、仕事は人と関わることが多いので、彩季子さんの「人を大切にしたい」というのはすごく大切だと思いました。「人を大切にする結果、お金もついてくる」と個人的には考えています。

「お金を追うのではなく、人の心を追う仕事」に私も就いていたいと思います。美穂さんも、文章を通して人の心に入り込んでいますね。

優花さん:文字を書く仕事も、人の心を追う仕事ですね。美穂さんが書いた記事を見た人の反応は、やりがいにつながっているのですか?

美穂:そうです。私はもともと文章が好きとか得意なわけではなかったので、SNSでブログを公開して嬉しい反応をもらえたことが、やりがいにつながりました。自分の拙い文章でも、誰かの背中を押せると気づいた時に、文章を書くのが好きになりました。

英語を話せるからこそ「言語の多様性」に気づく

優花さん:今、ライターとして書きたい記事や目指したいビジョンはありますか?

美穂:日本の多様性に関する記事を書いていきたいと思っています。個人ブログで多様性についてインタビューした記事をあげているのですが、より大きいメディアで書いていきたいです。そして、誰かの気づきになるような文章を届けたいと思っています。

優花さん:少しだけブログを覗かせてもらったのですが、言語を日本語と英語両方で書いているのが良いと思いました。日本はどうしても、国際的な海外では当たり前に話されている話が、日本語の記事になるのは遅いかなというの感じていて。個人的に仕事として、日本語と英語の両方でやっていきたいと思っています。

というのも、必ずいつも日本語でしか配信しないのをやめていきたいと思っていて。日本人だから、日本語だけで発信するというのは、英語ができるからこそ違うのではないかと思う時があります。日本人向けには日本語が良いだろうというのは、固定概念な気がしてまうのです。

私は、英語でもメッセージを発信できたり、コミュニケーションが取れる日本人でありたいと思っています。多様性のテーマで言うと、日本語でしか配信しないことが多様性にならないなと考えています。

日本語でしか配信できない環境には、日本人はオンオフのスイッチがあると思っていて。日本の学校教育で、常にスイッチで動くように指示されているからだと感じています。だから、日本人は急に英語を話すと、英語モードに身構えてしまう傾向があるのではないかと思うのです。

優花さん:ですが、この日本人のオンオフの風潮は最近の教育現場ではどうなのか聞いてみたいです。

美穂:私は大学の時に、日本人のオンオフの風潮はなくなっているのではないかと感じました。私の大学は海外経験者が多い大学です。そのため、友達の多くが英語も日本語も流暢に話せます。

彼らと話していると、英語と日本語がミックスした会話になりますが、1年生の時の日本語しか話せない自分には違和感でした。「英語を話せることを自慢したいのかな」「英語話せる自分をかっこいいと思っているのかな」このような感情を抱きましたね。

ですが、自分が海外に行くと、英語と日本語が混ざった会話の自然さがわかりました。英語の中には英語でしか表せない言葉もあるし、英語話者にとって自然と会話に英語が出てくるのはカッコつけでもなんでもないと気づきました。

このエピソードを通して、日本人でも海外経験や英語学習の経験があれば、言葉のオンオフがなくなると思いました。

日本人らしさを忘れないために大切なことは「アイデンティティ」を持つこと

美月さん:美穂さんの話で言うと、私は反対に日本語と英語をわざと混ぜないようにしています。どんなにアメリカに長く居たとしても、自分の母国語は日本語であるので、きちんと話すように心がけていて。

どうしてもアメリカに在住の現地の日本人と話すと、ミックスジャパニーズ英語になってしまい、慣れてしまいます。ですが、友達に指摘されました。「それは、失礼。日本の環境にいるのだから日本語を話すべき。」だと。

その時「たしかに」と思いました。私はその時までミックスジャパニーズ英語で話していましたが、変えようと思ったのです。今は良いか悪いかは別として、私個人的には分けるようにしています。

仕事上で話をしている時に「あの人英語ばかり話してくる」と偏見を持たれてしまうかもしれません。ですが、日本語をスムーズに話すことができていたら「この人は、長くアメリカ居てもちゃんと日本語を話せるな」と好感を持ってくれると思っています。

優花さん:そういったご苦労もあるんですね。私は逆の視点でした。留学に行った際、日本人で集まって日本語で話す文化がありますよね。その文化が良くないと感じています。

ですが、それは日本の教育で「日本人といる時は日本語で話しなさい」としか教わっていないので、自然と日本語を話してしまうと思っています。「郷にいれば郷に従え」のように、美月さんが日本では日本語を話すのと同じで、日本人も海外に合わせることが大切でないかと考えます。

美月さん:プラス、英語を話す時のパーソナリティって変わりませんか?英語はすごくストレートな言語なので、英語を話す時の自分で日本に行くと、誤解を生んでしまうことがあります。誤解を生まないためにも、言語を分けているのはあります。

優花さん:そうすると、日本に言語でパーソナリティが変わる価値観がある以上は、国際化するのが難しくないでしょうか?昔の古き良き美しい日本語というものを大切にすればするほど、海外の人は日本に来たら綺麗な日本語を話すことを強いられるし。

美月さん:海外の人は良いと思います。ただ、個人的にはどれだけに海外に居てもアイデンティティは日本人じゃないですか。俗に言う「アメリカかぶれ」と言われてしまう人は、日本の文化を否定してきているのかなと思っています。

だから、言葉だけの問題ではないと考えます。自分のアイデンティティを持つことは、多様性を意識していることだと思うのです。「日本人らしさ」を忘れないように意識しているので、対日でお仕事させていただく中でも、誤解なくコミュニケーションできているのかなと思っています。

美穂:仕事の価値観から言語の多様性まで幅広くお話しいただきありがとうございました!言語の多様性についてまたセッションさせてください!皆さん、今日は貴重なお話しをありがとうございました!

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